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麻酔科医師の研究日誌

VAPに対する新たなる機器 『銀被覆気管チューブ』

銀被覆気管チューブ使用とVAP発症患者死亡率との関連


Chest 2010;137(5)1015-1021より

Association Between a Silver-Coated Endotracheal Tube and Reduced Mortality in Patients With Ventilator-Associated Pneumonia


Background:
NASCENT studyにおいて、銀被覆気管チューブは通常の気管チューブに比しVAPの発症を減少させることが示された。
Methods:
気管チューブの効果と死亡率における危険因子を評価するために、我々はNASCENT studyでの患者データを後ろ向きに分析した。我々は患者の死亡原因や潜在的な多剤耐性菌(緑膿菌アシネトバクターなど)によるVAPを調査把握し、銀被覆気管チューブの使用、APACHEⅡスコア、持続鎮静、昏睡、COPD既往、緊急手術/外傷のそれぞれの項目でVAPに関する死亡原因との関連を見るために多変量解析を行った。
Results:
VAP発症患者の死亡率は(silver群5/37名;14% vs 対照群20/56名;36%,P=0.03)であり、銀被覆気管チューブはVAP発症患者の死亡率減少に貢献していた。VAP発症患者のうち、感染に関連する死亡(pneumonia and/or sepsis)は(silver群1/5名;20% vs 対照群9/20名;45%,P=0.61)であった。VAP発症患者の死亡率の多変量解析では、銀被覆気管チューブは死亡率軽減予測因子として有意差を認めた(silver群 vs 対照群,OR 0.28;95% CI, 0.09-0.89;P=0.03)。
Conclusion:
今回の結果で銀被覆気管チューブは、NASCENT studyでのVAP発症患者の死亡率を減少させたことがわかった。これら予備調査レベルの結果を確証するため、さらなる研究が必要である。



教訓:銀被覆気管チューブは今のところ日本では使用されていないが、今後導入されICU領域中心に使用されるかもしれない。コストの問題を含め関心は尽きないが、VAP予防においてはまずは手洗い等の標準予防策の徹底が先決であろう。