ICUを4年間専従し、ひと通りのことを経験させてもらって、この間にICU専門医も取得することができました。
そして6月からはICUから手術室(手術麻酔)へ担当部署を移し、手術麻酔の指導的立場と麻酔科学生・研修医担当として、ほぼ毎日を手術室で過ごしています。
約1ヶ月が経過しました。
この4年で新たに変わってきた麻酔科学。
例えば超短時間作用鎮痛薬であるレミフェンタニル。同じく吸入麻酔薬デスフルレン。筋弛緩薬、筋弛緩拮抗薬。
さらには、局所神経ブロック法。
技術の変化のめまぐるしさ(といってもほとんどは薬学ですが)は、麻酔科学においても同様です。
若手の先生が当然のように新しい手技手法で患者管理をしている。この変化に圧倒されています。
私が麻酔科学を研鑽しながら集中治療に根ざしたのは、いうまでもなく周術期患者の術前術後を更に詳しく把握することで、麻酔科医の使命である周術期急性期管理をよりよいものにできるであろうとの原則に基づいたものでした。
ここにきて新しい手術室で指導的立場にたち、前述の新たな麻酔法の存在に押しつぶされそうになっていました。
「若い学生・医師に教えるには最新の知見を」
といった、錯覚です。
『改めて益なきことは、改めぬをよしとするなり』
改革をして利益になるようなことは改めるべきだが、改革しても利益が出ないことは改めないほうがいいのだ、という意味です。
はじめは、ムリにでも新しい手技を使ってデータを取って、エビデンスを果たして・・・と、様々なことを考えていましたが、エクスペリエンスがついていきません。
そして無理に自分を変えず、今までに自分が培ってきたこと、つまりは集中治療的概念を背景にした麻酔科周術期管理を最大限に全面へ推しだしていこうと決めました。
これで最近こころが軽くなりました。
新しい麻酔科学の知見もすこしづつは取り入れていきますが、自分にしかできないことで患者さんのためになる100%正しいと思うことを、ついてきてくれる後輩たちのためにもやっていこうと考えているこのごろです。