朝活ドクター.com

麻酔科医師の研究日誌

学会参加で日常業務の2倍も3倍もの成果を生み出すことができる

先週末、集中治療医学会の地方会へ参加してきました。

今回の会場は九州大学百年講堂、九州大学医学部の敷地内です。

九大病院は、まずは、見るも立派な建物でした。


-われわれはなぜ学会発表をするのか

それは、日々の診療や研究でわかったことを考えて、他人に公に公表することでさらに周知していく、議論を重ねて皆で考えていく。
最終目標として、論文として形にすることで万人の目に届く状態として、今後の医療発展にまだ見ぬ未来の患者のために自分の経験を活かしていくという作業なのです。

周りを見ていると、どうやら発表が好き嫌い、学会が行われる場所で行く行かないを決める、など深くは考えていない先生方も多いようですが、本来の目標ではありません。
担当患者を同僚に任せて現場を離れる、それなりの理由と目的があるのです。

とくに学会発表だけに限って言えば、スライド10枚もあれば当日のプレゼンテーションは完成するので(準備は必要ですが)、比較的楽に言いたいことを告げられるのではないでしょうか。


-後輩に発表指導を行うこと

さて、今回は自分は発表なしの参加でした。
今回の学会で自施設から4演題を発表し、その内2演題分(2人の後輩に)、指導を行いました。ただ単純に、治療に難渋した症例を発表するという症例報告が1題だったのですが、その後輩君は数えるくらいの発表経験で、地方会ではありますが、公衆の面前でのプレゼンそのものの練習でもありました。私自身も自分で発表する時とは違った格段上のエネルギーを使ったように思っています。

本人はどこまで感じ取ってくれたかはわかりませんが、私はさらにこの学会参加の過程で考えたことを連ねてみます。


-学会参加の成果

1.後輩の経験値アップ(学会発表の経験および発表すること自体の意義)

2.臨床力アップ(重症患者の治療経験と、その重症度の再確認)

3.発表指導を通じての奥義の伝授(ちょっと大口ですが・・・)

4.(発表者の)発表時の質問に対する素早い検討と考察の返答(クレーム対応)

5.学会参加による他社の発表聴講と、新情報の獲得

6.道中での普段の現場では話しきれない同僚とのコミュニケーション


-そして現場へ

学会の間、留守番部隊が現場に残ってくれたおかげで、日々変わらない診療の継続ができます。
これができて始めて学会参加の成果も充実していくものだと思います。この継続がICUの臨床に携わる者には重要です。目の前の患者の治療ができずに、未来の患者は直せませんから。
スタッフを充実させて、皆が80点以上取れるような能力を身につけて、それを能動的にシステムとして組み立てていくことが、自分の、チームの目標でもあります。

うまく引き継ぎができて、参加できなかったスタッフに学会報告できて、知識を共有して、そして次なる成果を産み出していくのです。
まだまだ発表をさせられているという概念でやっていたかもしれませんが、まあ最初はそんなもんだと思います。
そもそも症例報告をさせた後輩君への動機付けは(稀な重症疾患患者さんの治療経験だったのですが)、ICU入室したときに、

『ベッドサイドで自分が一番というくらい患者さんを見なさい』
『文献をたくさん調べなさい』
『自分がその患者さんについて一番詳しくなれるように勉強して診療に向かえ』
『治療経験として全力を尽くし、学会発表ではないが、いつでもプレゼンできるような心地でいなさい』

結果として患者を救命し、無事にICU退室へと導きました。そして、その流れで学会発表です。無事に発表もこなしました。
これは患者さんへの恩返しとも思っています。

今回は治療に関してもですが、私自身、自分でこなすこと以上のエネルギーでした。
自分は、影からではありますが、後輩以上に詳しく物事を見ておかなければなりませんので、当然の事だと思いました。

後輩に経験させたということ、今学会を通じて得たことを次へとつなげるため、論文作成、次発表なども視野に入れ(当然、患者診療も)、さらなる日々の充実を考えるこの頃です。