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麻酔科医師の研究日誌

NO吸入療法

NO吸入療法を経験しました。



・正常肺では低酸素にさらされている肺血管床が収縮し、換気状態のより良い、肺胞酸素分圧の高い肺領域に血流の再分布が起こる。疾患によっては換気状態が良くても血管トーヌスが異常に上昇している肺領域の存在が知られており、吸入NOは換気領域の血管抵抗を下げることで肺内の血流分布を促進する。
・吸入NOが肺内シャントを減少させ酸素化を改善することは、急性呼吸窮迫症候群の患者でも報告されている。
(引用:麻酔54巻増刊S14-S19,2005)



NO吸入療法は一般成人ではは保険適応を認められていません。効能効果、副作用、危険性をきちんとムンテラし同意を取ったうえでの施行となります。当然、材料費は個人負担もしくは医療者側負担となります。現段階の適応としては新生児肺高血圧症のみです。

しかし臨床応用では慢性肺高血圧の治療、②周術期肺高血圧の治療(先天性心疾患、成人患者における冠動脈再建術と弁膜疾患手術、心臓移植、左心室補助装置の装着)、③急性呼吸窮迫症候群などがあげられています。


今回ICUでのIABP+PCPS⇒左心室補助装置(LVAD)の装着時の肺高血圧、PA spasm crisisを経験しました。(このような病態があるという噂を聞きましたが、正式名、病態、原因はよくわかりません)。とりあえず無事に終えたかと思っていたLVAD装着後に、一瞬にして非常にクリティカルな状態へ陥り、エコー上も左房は虚脱してしまって血行動態を維持する術がありませんでした。
患者詳細はここでは述べませんが、NO吸入を急遽考慮検討し、吸入濃度10ppmで状態は一瞬にして軽快、一旦は落ち着きました。



・肺血管抵抗は、通常LVADを必要とするような心不全患者では上昇しており、人工心肺の影響で術後さらに増加することが知られている。
・無作為二重盲検臨床比較試験では、肺高血圧を呈したLVAD装着患者でNO吸入が肺動脈圧を低下させ、LVADの流量を増加したことが報告されている。
(引用:麻酔54巻増刊S14-S19,2005)

文献がありました。


すなわち現時点での治療の域を超えた、つまり助からない人も助けれるかもしれない治療法がこの世にはまだたくさんありそうだということを同時に考えました。
当然安全面など患者さんにとって不利益な面も忘れてはいけません。また未適応なら治療に関しての責任も取らなくてはなりません。

今回折角なのでもう少しNO吸入療法について勉強してみようと思う。